花鳥諷詠は自然に生まれ来った人間の余裕であります。この余裕があればこそ、人間の眉のひそみを見せないで済むのであります。
魚が泳いでいるのを見ればすぐこれを漁獲せんことを思い、鳥の飛んでおるのを見ればすぐ狩猟せんことを思い、また樹木があればそれを伐採せんことを思う人は哀れむべきであります。
我らはそれらのものによって衣食住の材を得ることは承知しておりますが、また同時にそれらによって遊楽の天地を形造ることも知っております。
ひとり汗ばかりを流すのが人間なのではありません。涼風を満喫するのもまた人間であります。花鳥と共におり、風月と共にいる、これが人間の一面の姿でもあります。
高浜虚子