陸は昼間、独り乗りボートで、海からのんびり観るもんなんだね

横浜港を海側から眺めたいと思い立ち、横浜に出かけた。
ふと思い立つ。このふと・・・がよろしい。ふと思いつく旅はお手軽でないとむづかしい。ふと思いついて向かいのオッパイ山へ登って我家を東側から眺めたい・・・・これは、無理だ。上から下まで完全装備で立ち向かっても、今は体力的におっぱいのふもとをうろちょろしてジエンドだろう。当人は満足でも、山は未消化の欲求不満だよねー。(なんも言わないけどね)

旅と言いますと、たいていの人は事前の計画準備を万端整え、その日に着る物の選定に始まり、お土産リストの作成、万が一の時にあわてない策を練り、保険や常備薬の確認などなどを経て、旅の残尿感が残らないカンペキに管理された旅を目論みます。
アタシはこの方式ダメだなー。乗り物や食い物の算段してるうちはいいけど、起こるかもしれない、巻き込まれて大いにあわてるかもしれない(たぶん無惨な)エピソードを想像しているだけで、ぐったりして旅から帰って来た気分になり、旅に出かける原拠のようなものが消えて行く。

そーいえば、思いついたので謝っときますけど、コンニチまで、例えばスタジオ入ってちょこっと練習して飽きちゃう「本番をヤラナイバンド練習」とか、「プレゼンのラフを作ってオシマイ仕事」とか、「妄想だけで済んじゃう男女関係」とか、実戦前に雰囲気だけ盛り上がってオシマイという、当番の「疑似体験で十分満足」体質に巻き込まれ、ご迷惑をおかけした皆さん、ごめんなさい。でもね、「お出かけは独り、思いつきで」が期待出来る野遊びです。お仲間と練りに練っちゃうとね、運動会や学芸会、新婚・修学・慰安旅行になっちゃうでしょ。極上のバカバカしい物見遊山、野遊びにならないのですよ。
やっぱ、予定された調和は旅には合わないと思うのだ。予期せぬ出来事に遭遇してあわてるワタシが「野遊び」の真骨頂。だから無事に帰宅した時の空しいこと虚しいこと。ひーひー言いながら転がり込み『我家がいちばん』のセリフを吐くために、ワタシはでかけるんです。

ま、そういう屁理屈をいろいろ並べてね、アタシの旅は「るるぶ気分で食べ歩き中華街と元町散策」じゃないんだぜ、っという知ったかポーズを見せ、横浜港にくり出すことにしたと。

ネットで調べたらさ、ブッフェスタイルのディナーに生バンド演奏が付いたナイトクルージングがあった。クルージングですよ。しかもナイトだ。弱いんだアタクシは、このカタカナに。こぬか雨にじんだマドロスさん御用達ホテルのネオン、一夜限りのブルーライトヨコハマが目に浮かぶぜ。これだよ、これ。夜霧に包まれたマリンタワー、恋人たちのプロムナード山下公園、グランドホテルの佇まい、旅情をそそる氷川丸・・・を沖から眺めたかったんだ!この45年!
考えてる余裕ありません。勢いと息切れでいきなり申し込みましたです。したらね、5分もしないうちにクルージング会社から電話がかってきました。確認の電話だった。

どうやら個室貸し切りパーティコースを元気よくクリックしちまったらしい。そういえばクリックマチガイはこれで三度目だ。一度なんか25万円相当のコンピュータソフトを間違ってウィンドウズ用で注文しちゃって、ひどい目に合った。もともとウィンドウズマシンとマイクロソフトは大嫌いだったが、これで無条件で嫌いになった。あんなクソPCよくつかっいてるよなー、みんな。
早く潰れないかなぁマイクロソフト・・・・。あ、こんなことはどうでもよいな。飯能の山奥に住んでるじーさんのクリックマチガイをたしなめに電話して来たわけです。今は飯能だがな、その昔は横浜の外れに済んでたんだぞ。横浜市歌だって歌えるんだぞ、ねーちゃん。えー、なめたらなめかえしちゃうじゃん!

はい、途中のあれこれは長くなるのではしょります。夕暮れの船着き場にはロマンチックなカタカナに負けた下心あります顔の数十人が並んでおりました。当番の好物「わけありなカップル」が3組ほど、おじいちゃんの米寿かなんかで「じーさんの年金払いで集められた大家族」、そして・・・こういう場所の天敵『8人ほどのオバさんグループ』。
オバさんのくだりは、描写の必要はないだろう。おぞましかったので割愛する。ひと言で言うなら、200人は収容出来る大型ナイトクルーザーは、わずか8人の熟女の子宮と胃袋と枯淡を知らぬ生命力に乗っ取られた、船上は戦場になったということ。

出航してすぐに気がついた。ナイトクルージングっていうのは、陸の灯りを頼りにあるべき建物、景観をイメージする船旅であって、ライトアップされていない物件はただの闇なのだ。みなとみらい21あたりは観覧車や高層ホテルがドリーミーな装飾風景になっているが、その左右はもっこり、ごっつり、げっそりした無明の闇なのでした。
気を取り直してシャッターを押したが、揺れブレがひどく、ご覧のような二日酔い写真。船尾に移動すると酔客が闇空にぶちまけるパン屑を攻撃する(平和のシンボル)カモメ軍団と奴らには管理不能な液状のクソ・・・こりゃイカンと船内に避難するも、ロカビリー、ロックンロールに始まり今しがた80年代ディスコミュージックに突入したアマチュアバンド演奏に縦ノリ乱舞するオバさん群、飛び散る唐揚げ、うどんのようなスパゲティ、賞味期限未定のスイーツ、ささやきあうカップル、覚めたカップル、じーさんのオヒネリ、制御不能な船内・・・涙が止まりません。

歳のせいか、最近すごく涙もろくなって、ハシが転がってもじわっと泣いちゃうんですよ。こういう症状を「感情失禁」というんだそうです。

翌朝の望見
赤レンガ、大桟橋、山下公園、氷川丸、マリンタワー、外人墓地、フェリス女学院、三渓園、磯子、富岡・・・左隅に観音崎