イソギンチャクに生まれたら、1日くらいは口をわざと閉じないですごしたい。優雅に波に揺られていたい。
そして次の日、食えたはずの飯を食えなかったことを後悔したり、どうしても本能には叶わずに閉じた口のことを考えてうなだれたい。イソギンチャクに生まれた身の程を知りたい。
イソギンチャクに誰かが聞く。
「お前の人生、楽しいの?」
イソギンチャクになった僕は思うだろう、「逆に聞くけど楽しいと思う?」
「さあ、どうだろう。」
「楽しいこともあるよ」
「どんなとき?」
「子どもが指突っ込んできた時とか。」
「へぇ」
「あとは、まぁ、たまに変な奴に会ったり。この前なんか俺をGRで接写してった奴がいたんだ。俺なんか撮って、いったい何が楽しいんだろうな。」
